舎長の教育理念(詳細)

 大切なお子様を育てているお母様・お父様方にお伝えしたいことを一所懸命にまとめたら、かなり長くなってしまいました。
m(_ _)m
 お忙しい方は、色文字部分だけでも目を通していただければ幸いです。

<本 文>

 今日の資本主義競争社会・情報化社会は、大変便利な暮らしをもたらしてくれた一方で、多くの弊害をも生み出してきました。僕は30年以上に渡り子供や若者と関わる仕事をしてきましたが、彼らを取り巻く教育環境には特に弊害が増してきたと感じるばかりです。

 多くの大人達が競争や生計に追われ、時間的・肉体的にも精神的にも余裕を失い、愛情を持ってじっくりと子供達の成長を見守っていくことが難しくなってきました。大人の都合や価値観をついつい子供に押しつけてしまいがちです。また、過多な情報に振り回され、子供を少しでも優位に立たせようと、せかし、責め立ててしまうこともたびたびです。さらに、子供の事件・事故に対する心配が増し、子供が冒険や危険と向き合う貴重な学びの機会も失われてきました。放課後に友達と屋外で元気に遊び回る子供達の姿を見かけることも、めっきり減りました。過保護・過干渉な子育てが一般化してきました。

 しかし、子供ひとり一人の個性を認め、未熟さを愛情深く辛抱強く受け入れ続けてあげなければ、人生の土台となる「自己肯定感」は根付きません。先を急がせ、過度に押しつけたり詰め込ませていては、子供の主体的な「好奇心」「冒険心」や「思考力」は育ちません。子供が抱く純粋な想いを、大人の価値観や都合で否定し続けたり、大人の願望を押しつけ続ければ、子供は夢や願望をあきらめ、受け身の姿勢となり、やがて心は行き場を失い、内向的になったり、あるいは破壊的になってしまうことさえあります。知識ばかり先行して、実体験や成功・失敗を繰り返さなければ、自分の意志と力で試練を越えていかなければ、「真の理解」や「強さ(自信)」は生まれません。ゲームやPC(スマートフォン)、インターネットに流されてばかりでは、「身体能力」が育たないばかりか、「人と関わる術や喜び」を学ぶこともできません。さらに、脳や睡眠に障害が生じることも指摘されています。

 あらゆることに多感でエネルギー溢れる子供が、日々自分の想いを押さえ込まれ、ただ「成績を上げること」「勝つこと」が最優先の(そう思わされる)環境に置かれ続ければ、たとえ受験に成功したとしても、計り知れない犠牲や代償を伴うこともあり得るのです。生きるエネルギーを失い自ら動き出さない受け身(指示待ち)の若者、心が折れやすく挫折に向き合えない若者、感情をコントロールできない精神不安定な若者が激増しています。「いかに楽して(ずるしてでも)世の中をうまく渡っていくか」ばかりに優秀な頭脳を働かせてしまう自己中心的な若者も少なくありません。良好な人間関係を形成できずに孤立してゆく若者も絶えません。僕がもっとも心配するのは、親や先生の過度な期待に応えようと、必死にがんばってきた“真面目”で“心優しい”優等生です。優秀な学歴をつかみながら、その後の人生で精神的にひどく苦しみ続けている若者を、僕は数多く目の当たりにしてきました。自分の本当の想いや弱さを心の奥底に隠し閉じ込めて生きざるを得なかった代償は、学歴などでは決して補えない深刻なものなのです。

 こうした弊害は、もちろん若者だけに限った話ではありません。世界中の大人達にも広がっている現象であることは、誰もが感じているところです。引きこもり・ゲーム中毒・ネット中毒・薬物依存など、流されるばかりで自律&自立できない大人の増加、交通マナーの欠落、自分の都合・感情ばかりを優先するクレーマーの激増、ネット上での他者への陰湿な誹謗中傷、さらには、詐欺・傷害事件・テロなど、他者に平気で危害を加える悲惨な事件の増加... 痛ましいニュースや出来事の絶えない毎日です。また、どんなに立派なオトナでも、様々な困難やストレスに囲まれ、身体や心の健康を失ってしまうことも決して珍しくない時代です。多くのオトナも子供も、不安を抱えながら日々を過ごしています。

 時代はさらに複雑になっています。先が読みにくい時代です。学校や受験勉強では学ばない出来事や問題が、これからも次々と起こってくるでしょう。国際化や国際紛争がさらに進み、相互理解を深めていかなければ解決できない問題もますます増えてくるでしょう。予期せぬ自然災害や人災にいつ遭遇するかもわかりません。また、人工知能などの技術が発達し、社会の仕組みや働き方も大きく変化していくかもしれません。今は想像もできないような新しい職業が、子供達の未来に待っていることでしょう。

 そんな未来を生きる子供達に今もっとも必要なことは、先を競って受験に備えたり知識をただ詰め込むことではないはずです。まずは「身体と心の土台」をじっくりと育てていくこと。そして、「未知なる状況や困難にも、他者と理解し合い、力を合わせながら、冷静に前向きに対処していく力」と、「元気にしなやかに、自分らしい人生を切り開いていく力」を伸ばしていくこと。つまり「生きる術と勇気」を育てていくことこそ、子供達にもっとも必要であろうと僕は考えています。

 そのためには、子供が自分の想いを大切に、目の前の一日を、一瞬を元気にのびのびと過ごす。すべてを全身で感じながら、実体験(成功や失敗)を重ねていく。頭をいっぱいに使い、試行錯誤しながら、納得しながら、少しずつ理解を深め課題を克服していく。仲間との関わりの中での自分を意識(自己客観視)しながら、「仲間と理解し合い、助け合い、楽しみを共有する術」を学んでいく。そうした経験の積み重ねが、「生きる術と勇気」となる真の「知性」と「自信」を育み、たくましい「自立」へとつながっていくのであり、それが結果的には、学業成績にも反映されていくものと僕は信じています。

 子供は環境に応じて自ら育っていく力を持っています。私たちオトナにできることは、子供が自ら成長していける環境を与えてあげること――やらせるのではなく、やってあげるのでもなく、高価な教材・便利な物をただ買いそろえてあげるのでも決してなく、子供が安心(信頼)を感じながら、自ら物事や勉強に興味を持って、生き生きと取り組んでいける環境を用意してあげることだと僕は思います。

 そうした環境は、人間の力なくしては生み出せません。時に優しく、時には厳しく、本気で見守り、応援してくれるオトナや仲間がいる。心から信頼し合いぶつかり合うことのできるオトナや仲間がいる。つらく挫折しそうな時も励まし、信じ抜いてくれるオトナや仲間がいる。夢や目標を内面からかき立て描かせてくれるオトナや仲間がいる――そんな安心と刺激の交錯する環境の中にいてこそ、身体も心も智恵(頭)もバランスよく成長していくことができるのではないでしょうか。

 僕の仕事は、生徒をありのままに認め、受け入れ、信じることから始まります。信頼はお互いを育て合う一番の原動力になります。信頼(安心)を基盤に、「自己肯定感」を育みながら、失敗など恐れることなく想いのままに冒険に踏み出していける「智恵」と「勇気」を、自分の歩幅で一歩一歩「自分らしい人生を描き、切り開いていく夢と喜び」を、子供達とともに膨らませていくことが僕の生きがいです。